経験知や感性が重視されてきた考古学に数理モデルや統計解析で挑む「数理考古学」が再び脚光を浴びている。主観的要素を減らし、客観性をより高めることができ、比較や検証も容易だ。大量のデータ解析を得意とする手法から新しい知見も生まれている。
数理考古学は欧米で1960年代ごろ提唱された、考古学で得られたデータを数値化して解析に使う手法だ。例えば、石器を分類するのに、「割る」「磨く」などの技術が使われていれば「1」、いなければ「0」などと表してデータベースを作成。統計的な解析で石器の特徴を見つけたり、ほかの遺跡と比較したりできるようになる。
ケンブリッジ大のエンリコ・R・クレーマ准教授(数理考古学)と奈良文化財研究所の庄田慎矢室長(東アジア考古学)は、弥生時代のイネが日本でどう広がったかを数理考古学の手法で解析し、昨年論文を発表した。
日本全国の132の弥生時代の遺跡から出土したコメのデータベースを作成。放射性炭素年代を統計的に処理して比較できるようにし、遺跡間の距離などとともに数理モデルを構築して、伝播(でんぱ)速度を割り出した。その結果、大陸から紀元前1千年ごろに北九州に伝来したとされる稲作が、加速や減速を繰り返しながら、東北へ広まっていった様子が分かった。
クレーマさんは「日本は埋蔵文化財調査のデータがそろっている。地質や地形の情報、文化圏など、色々な条件と組み合わせて解析できる」という。
明治大学総合数理学部の若野友一郎専任教授(現象数理学)と名古屋大学博物館などのチームは2020年、人類の進化を理論的に説明する数理モデルを発表した。
旧石器時代、私たちの祖先で…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル